連載10回目:技術は一日にしてならず㊤(電気新聞2018年5月2日掲載)

 学院を訪れる人は「入学案内を欲しい」とか「詳しい話を聞きたい」という人ばかりではない。「実は3種は持っているのですが」と切り出す人もいる。「3種には合格しているのですが、現場でばかにされて困っています」「トラブルがあったとき、何がどうなっているのか分からないのでウロウロしているうちに被害が広がって、会社に損害が出てしまったので私は会社にいづらくなって困っています」などと言うのである。
 どのような学習法で電験3種に合格したのか聞いてみると「公式を暗記して何年もかかって科目別に取りました」「過去問を暗記するまで何度も解きました」などと答える。初級クラスの問題を解いてもらうと、公式に数字を入れてわずか3行程度の解答を書く。図示することも説明の言葉もない。電気主任技術者の仕事は説明力が必要だという考えは全くないらしい。
 このような人に「仕事ができるようになりたいのですが、どうしらよいでしょうか」と聞かれても困ってしまう。
 かつて、電験の受験科目は6科目あり、全科目一度に合格点を取らなければならなかった。1科目目落ちた場合でも次年度は全科目受験するしかなく、当然毎回全科目を勉強したものである。
 3種と、1種・2種の1次試験は昭和の終わりに五者択一の試験に変わったが、その昔は記述式だったし、6科目一度に合格点を取らなければならないという制度は平成6年まで続いたから、受験しようと思う人は相当な覚悟を持って勉強を始めたものだった。
 また、電気は科目で分けられるものではないという認識があったから、皆、土台の理論と他の科目との結び付きを大事にしていた。

 その頃は3種合格後、2種に進もうという人は非常に少なかった。「3種でさえあれほど大変な勉強を強いられたのだから、その上などとんでもない、勘弁してくださいよ」という心境だったのだろう。2種に進む人の多くは電力会社か大きな工場を持つ会社に勤める人たちがほとんどだった。1種となれば神様といわれたものである。
 今はどうか。公式暗記で何年もかかって3種に合格した人が、当然のように2種1次試験を受ける。3種と同じ学習法で公式頼りだから合格まで何年もかかる、それでも何とか2次試験にたどり着くが、記述式には全く歯が立たず敗退。2次試験は2年の猶予があるが次年度も合格できず、再度の1次試験を受けざるを得なくなる。これを何回も繰り返す人の何と多いことか。
 毎年「3種は合格しているが2種に進むために3種を学び直したい」という人たちが入ってくる。しかし、公式暗記で答えを出すことに慣れてしまった人が「本質から系統立てて考え、図示して言葉で相手に伝わるように説明する」という学習法を身につけるのは、何とかして自分を変えようと強く思っている人でないとなかなか難しい。かえって電気の世界は初めてという人の方が素直に伸びて行く。
 近年のスマホやネットの普及で、電験3種は簡単に取れると思う人が増えているだ。しかし、公式に数字を当てはめて答えを出すことだけはできるという主任技術者が現場に立つ、これで本当によいのだろうか。
(つづく)

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