連載8回目:国は違えど役立つことは(電気新聞2018年4月4日掲載)

 近頃は外国で仕事をする人は珍しくないが、その一人、ゼネコンの設備担当のOBの話である。
 初めて海外に赴任したとき痛感したという。国内ではメーカーやサブコンに問い合わせれば知りたいことは手に入るが、海外ではそうはいかず自分で答えを探すしかない。しかし、そうするには電気に関する知識が自分には足りないと。
 そこで電気を勉強し直そうと思った。もともと、大学は電気工学科出身で電験3種は申請で取得している。しかし、基礎から学び直さなければ仕事には役立たない、そう考えて学院に入学したという。
 中国、ベトナム、メキシコなど様々な国に赴任し、その度によくメールをくれた。今回はそのメールを幾つかご紹介する。
 「今回も学院で学んだことが大いに役立っています。様々な状況を客先に説明するとき、学院で学んだように図示したりプロセスを丁寧に説明すると理解してもらいやすいのです。事故が発生したとき『今、このような事象が起きたのでこのような状況になっています。ですから、こう対応します』と説明すること、それはまさしく学院の学習そのままです」
 長く海外で仕事をしていると、むしろ日本の配電方式が特異ではないかと思えてくるという。「海外では電圧など目に見える部分の違いもありますが、接地方式など目に見えない配電方式自体も違います。日本では漏電遮断機(ELCB)を何の疑問もなく使っていますが、海外では日本で保護するミリアンペアでの遮断という概念自体ありません。これは接地方式の違い(TT接地方式、TN接地方式)からくるものなのですが、この点を理解している日系企業の現地の技術者は少ないです。ですから図示して説明することは、とても重要なことなのです。
 海外で仕事をする場合、必ず言葉が問題になる。もちろん言葉は重要であるが、それ以上に重要な物、それは技術力と彼はいう。
 「メキシコ赴任時、国費留学でアメリカやスペインで電気を勉強してきた方々と協議をする機会がありました。当初はこちらを下に見て、本質ではない部分をサラッっと話しただけで説明を終えようとしたので私は気になり、電流の流れや起きている事象の回路図やベクトル図を描いて質問し、こちらの考えを述べました。その結果、日本語、英語、スペイン語が入り乱れ、皆で白板に書き込みながらの議論となり大いに盛り上がりました」。言葉は通じなくても図と数式と単位は通じるのがこの世界の面白いところ。
 赴任早々の技術者は真っ先に現地の電機系スタッフから技量を試される。「例えば『こんなことが起きました、何が原因でしょうか?』というような質問です。答えが欲しいのではなく、どのような受け答えをするか、に興味があるのです」
 「経験上このような場合、適当な回答をするとその後の業務に少なからず影響することを知っているので、真剣な姿勢を見せることにしています。質問の内容をはじめからメモに取り事象を確認し図を描き、時には逆に質問をしながら『私はこのように考える』と返すのです。ここでも学院での授業と同じような光景となり『今回の赴任者はなかなかやなるな』という評価になるのです」
 事象を理解し図示して説明できる、ということはどこの国でも通用し、自信につながる。それが仕事に大きな幅をもたらしてくれる。「学院の授業が懐かしいです」とメールにはあった。
 彼は先日、英語圏の仕事に就いた。今度はどんなメールが来るか、楽しみにしている。
(つづく)

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