連載4回目:心ひとつで変わるもの(電気新聞2018年1月17日掲載)

 当学院の生徒には変わり種がたくさんいる。そのうちの一人、お笑いとして脚本を書き舞台にも立っていたという合格生がいる。
 お笑いの世界に入ってはみたものの、なかなか売れなかったそうである。そのうち父親が体調を崩したことで収入の道を探ろうと思ったとき、何もできない自分に気付いたという。そんなとき、大学では電気を専攻したのだから電験3種を取ってみたら、という父親からの助言で学院に入って来た。
 いつも明るいし勉強もそれなりにやっている。しかし、大きくは伸びない。明るいのは良いのだが遠慮なく軽い発言をし、人を揶揄(やゆ)することもある、本気度が伝わってこない。能力はあるのにもったいないと、少々気になる存在の生徒だった。
 そこで授業後に残ってもらい、話をすることにした。彼は初めは私の意図が分からなかったようだったが徐々に気付き、自分の内面を見詰め始めた。そうなると涙が出て来る。そばに置いたティッシュペーパーで涙を拭きながら考え込む。そんなことを何度か繰り返した。
 結果、彼は大きく変わった。真剣に勉強に取り組むようになり、3種全科目一度に合格した。
 彼は言った。「お笑いで売れなかったは私がちゃらんぽらんだったからだと思います。以前は形だけ整えて適当なところで済ませていましたから、仕事を頂けるはずはなかったのです。近頃は『物事に取り組む姿勢が変わったね』と言われるようになり、だんだん仕事を頂けるようになりました。結果、お笑いで食べていけるだけの収入が入って来るようになりました。学院でたたき直してもらった性根こそ今の財産と思います」と。

 食べていけるようにはなったが、その後、彼は電気の世界で生きたいと思うようになり、お笑いの世界を離れ、今、ある設備会社に勤めている。
 学院で育つと「電気とは何ぞや」から体系的に学ぶため、説明力が付き提案もできるようになるのだが、それが生かせて会社から大変喜ばれ、新しい部署ができたという。
 そんなある日やってきて「忙しくて2種の勉強ができない、学院に来て勉強したい」と嘆いた。そこで私は言った。「現場の勉強ができるということは有り難いこと、会社が新しい部署を作って仕事を広げようとしているう今、それに傾注することが一番良いことと思う」と。彼は「吹っ切れました」と笑顔になって帰っていった。
 先日「近況報告です」とメールが入った。特別貢献賞と報奨金、熨斗(のし)袋2枚の写真が添付されている。
 顧客から「他の会社に訪ねたが資料が送られて来ただけで分からなくて困っていた。君に聞いてよく理解できたよ、有り難う」と言われたという。またその後、彼を名指ししての仕事が入ったそうである。「まだぺーぺーの私なのに、元請けを通さず直接に仕事の依頼が入ったのです。その他にもやりがいを感じることの多い毎日です」
 「電気は目に見えないからお客さまに図や言葉で説明し、何に対してお金を支払っているのかを明確にしなくてはいけません。物事を根本から理解して説明し、その上で技術を生かすことができるようになってこそプロだと思います。こういった考えや知識という武器だけでなく、つらい状況にもあきらめない根性や合格してから何を成すか、が大事ということなど、たくさん頂いたことに感謝しています」と。
 これからも努力を重ね大きく成長していってほしいと、講師たちと共に心から願っている。
(つづく)

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